えちぜん鉄道の生い立ち (その4 えちぜん鉄道の誕生と再生)

1.えちぜん鉄道の誕生

京福電鉄福井支社は、いったん全線を廃止して、2002年(平成14年)県と沿線自治体が出資する第3セクターの会社えちぜん鉄道を作り、2003年(平成15年)資産を京福から引き継ぎました。加えて国交省からの「安全確保に関する事業改善命令」に必要な工事も実施することになりました。(ただし、収支の見込みが立たない永平寺口-永平寺間は、引き継がれず廃線になりました。)

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 永平寺へ向かっていた京福電車

 

 

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2003年(平成15年)7月19日 永平寺口-福井-西長田が部分開通しました。8月に三国港まで、10月には全線開通しました。一旦廃線になった路線が復活する、あまりない出来事でした。

越前本線は勝山永平寺線、三国線は三国芦原線と改称されました。

 

2.えちぜん鉄道の取り組み

開業に先立ち、最初に行ったのは、国土交通省に申請する運賃を京福のときより値下げしました。京福時代には「運賃が高い」と言う批判が多く寄せられたからです。

 1日乗車券も1000円から800円に値下げされました。永平寺への足がなくなったことにもあります。

 また、新たな取り組みとしては「アテンダント」の採用です。これは旅客専務車掌にあたるものです。これはえちぜん鉄道の施設が、ほとんど京福電鉄からのものでしたので、最近のバリアフリーに対応できません。施設を改修すればよいのですが、多くあるので、改修費用がかかります。その代わりソフトウェアの観点から改善することにしたようです。

 アテンダントは高齢者が多く利用する昼間の時間帯に乗務して、「乗降介助」や「乗車券販売」を行うものです。全国で始めての試みでした。開業当初は、乗客にも理解されず、アテンダントの試行錯誤が続きました。やがてその役割が理解され、また遠方からの乗客の観光案内も行うようになり、その存在はアテンダントの著書「ローカル線ガールズ」で全国に知れることになり、大成功を収めます。やがて各地でアテンダントが生まれることになります。

 アテンダントに続く試みは「えち鉄サポーター」の募集です。えち鉄の課題は開業後10年間で、経営を軌道に乗せることでした。沿線自治体の補助は10年でしたので、この間に地元の利用客(定期乗車)以外に定期外乗車を増やすことが課題でした。

 サポーターになることで、乗車券の割引が受けられたり、協賛店の割引が受けられました。協賛店を探すことでまた新たな観光スポットを見つけたり等で、沿線外の乗客のリピーターが増えてゆきます。

 えち鉄サポーターやアテンダントの努力で地元や大阪、名古屋からの観光客が増えて、リピーターも増えてゆきました。収支の面から見れば、えち鉄後は、定期外収入が定期収入を上まるようになりました。これも珍しいことです。

 (えち鉄サポーターは小冊子を持ち、大抵えち鉄や沿線の観光に精通しているので、乗車券の発券はしませんが、アテンダントの代わりにもなります。昼間に乗車しているときは気持ちよく居眠りしています。? アテンダントが乗車しない時間帯に、「にせアテンダント」として活動することになります??かな)

 

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 また当初は京福と同じ、つりかけ駆動で老朽化していた電車も、愛知環状鉄道から電車を譲り受けることになります。Mc6001、Mc6101で1両単位で走行する現在のえちぜん鉄道の主力です。転入に際し、片運転台のものは、もう片方にも運転台を取り付けました。その他ワンマン機器の取り付けの改造を名鉄住商工業(現在は解散)で実施しました。中古車ですが、カルダン駆動、空気ばね台車で最近の電車と遜色はありません。乗りごごちは良く、座っていると眠くなる電車です。また最近はJR東海から2両固定編成のMc7000を6編成作りました。(阪神車輌メンテナンス、大阪車輌工業等で実施)ただし譲り受けたのは車体と、台車くらいで走行機器は最近はやりのインバータ化、回生ブレーキを装備する。元の電車とは全く別物の電車になりました。

 「えちぜん鉄道の生い立ち」はこれで終わりにします。お疲れ様でした。

 

<参考文献>

鉄道ピクトリアル No.461  中部・北陸地方のローカル私鉄

鉄道ピクトリアル No.573    北陸本線

 

<おまけ>

えちぜん鉄道になって、乗車券のうちそれまで残っていた硬券はなくなってしまいました。しかしアテンダントさんが車内で乗車補充券を発行するようになりました。

フリーきっぷの場合は、特に必要ないのですが、記念にするにはちょうどいいかもしれません。写真のように手書きです。(最近の補充券はプリンタで感熱紙印字するようになって味気ないですが)

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(これは開業時のもの)

 これはあくまで仮想ですが、福井鉄道との相互乗り入れ、Mc7000型の導入などは、将来への布石ではないかと考えます。いずれも現状から見れば過剰な投資に見えます。ですが、北陸新幹線の開業を考えたときに、石川県と違い、在来線の強化は避けられません。 スピードアップや昇圧を考えたときに手を打っていたのでは遅いかもしれません。今も大事ですが、「将来をどうするか」も大事です。福井の私鉄は守りから攻めの体勢に変化しているようです。

 

 

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 <なかなか手に入らない一本義グラス 勝山駅で置いてくれないかな>